それにあった大きさ ってのがあるんだナ 東屋のお盆、その真鍮銀メッキを長らく愛用していて、とても満足いっているのだけれど、食卓へ料理を運ぶ、食卓から食器をひくには小さく、そこに小さな穴が開いていた。

真鍮盆のもっと大きなサイズが欲しい、純粋な用途から東屋に新サイズ制作の直談判をした。

それではと東屋が作ってくれたのは、真鍮盆の延長にはない深型のアルミ盆、まだタンカー2と名付けられていない頃はバール盆と呼ばれていたそれだった。

僕が考えていた物ではない、どこか工業製品の香りのするシンプルなアルミ盆、その初御披露目の日、《いい物ができた》と力強く説明してくれたのだけれど、僕はどうにも心惹かれない。

いわれるまま云々頷くのだけれど、僕がいまいちピンときていないことは伝わったようで《一つぐらい工業製品の匂いがある物を生活に加えるのもいいものですよ》そんな言葉も添えられ、僕はその深型アルミ盆との生活を始めた。

ただ使ってみればわかるのだが、望んでいた物と雰囲気は違えども、僕の生活に空いていた穴は完全にふさがっていた。

軽くて丈夫なつくりだから、どれだけ食器を重ねのせたとしても不安はない。

まったく歪む気配もない。

また深さがあるからナニかこぼれたとしても問題にならない。

サッと水で流して拭けばそれだけのこと。

とにかく便利に使えた。

そして段々とその物の雰囲気に慣れ、そこでやっと真鍮盆の延長になくて良かったことがわかった。

物には、それにあった大きさってのがあるんだナ。

真鍮のお盆はお酒や灰皿、お茶やキャンドルといった嗜好品、少し趣味によった物、生活のゆとりや休息をのせる物だから上品であって欲しい。

お運びは多くの食器をのせて運んで汚れて洗ってを繰り返す物だから、それが気にならない使い勝手や雰囲気である事が、意匠の上品さに勝るのだ。

真鍮のお盆は重量もある。

それが大きくなり、更にそこに食器が沢山乗れば、重くて扱い難いだろうし、凝った意匠も大きくなってしまえば上品ともいえなくなる。

お運びが欲しいのなら、真鍮のお盆を大きくするのではなく、お運びとして使い易いお盆を作った方がいい。

なるほど、と後々になって理解できた。

とにかくタンカー2は良かった。

そして僕にとっては学ぶべことの多い物となった。

イタリア この形、僕にとって初めてみる物だったのだけれど、僕が知らないだけであって、イタリアのバールでよく使われている典型的なトレイの形なのだそうだ。

実際に東京にあるローマ料理屋で使われているイタリア製バール盆を見せてもらった。

現地で使われている物は樹脂製が多く、ロゴ等がプリントされていて派手な物が多い。

そんな深いお盆にテーブルの上の使い終わった食器を積み込んで一気に運ぶ。

飲み残しや食べ残しがあっても気にせず積み重ね、それが多少お盆にこぼれたとしても、盆には深さがあるから外にこぼれだす事もない。

そういったことを一切気兼ねすることなく、思う存分に積み込み、そして一気に運ぶ。

そんなイタリアのバール盆を、日本の職人が1枚のアルミ板からヘラ搾りで一つ一つ丁寧に作りあげることで、実に東屋らしい丈夫な日用品が完成した。

イタリアの日常に根付いたお盆だけあり、実際に使ってみれば、本当に使いよく、繰り返しになるけれど深く軽いお盆は本当に便利だった。

この道具、大事に綺麗に使おうなんてあまり思わないだろうから、日々気兼ねなくザックリ使い、使い込んでいけば段々とナカナカに生活が染みた良い姿になっていく。

それはどこか気に入ったスーツケースをずっと使い続けていく事の楽しみとも少し似ている感じがした。

スツール60とキッチンリネン タンカー2が日常の一員となり、いつの間にか撮影合宿のスタメンに抜擢される程の圧倒的な愛用っぷりとなっていた。

そして合宿の時にアッと気付いた。

スツール60の上に置いて使ってみよう。

その天板とサイズが近いので見た目にもバランスは良さそうだ。

スツール60の上にタンカー2を置き、ドリンク用のサブテーブルとして使ってみたら便利なのではないだろうか?結果、それがとても良かったのだ。

使い終わった器や飲み終わった酒の瓶をそこへ置くにもよく、後々も実に便利であった。

やはりフチがあり深いというのは置く場所としても安定感があり、金属は何を置いても大丈夫だという安心感もある。

そんな事もあり、スツール60と組み合わせて使う事を考え始め、飲み物ではなく鉢植えをおいて部屋を飾れば、プランターケースのようにもなるなと考えた。

そんな風に用途のイメージを膨らましていく中で、定番用途が1つ生まれる。

キッチンリネンを敷き、この上で食器を乾かす。

これはスコープ的生活のワンシーンでもあるのだけれど、タンカー2の上にキッチンリネンを敷けば、食器を縁にやや立てかけつつ、うまく浮かして乾かすことができる。

特に東屋のキッチンリネン麻布十四番と組み合わせればベストマッチ(当然なのだけれど)、これは本当に素敵な組み合わせだった。

また休みの日に長くお風呂に入る習慣があるため、その供をまとめて置くにもタンカー2は重宝している。

まさに一つあると便利なアルミ盆、バール盆、どこでも便利で絵になるお運び、東屋のタンカー2、なのである。

スペック 材質 アルミニウム 寸法 約φ350xH50mm 約400g 生産 Made in Japan 購入前に確認ください ・ 小傷や磨き跡が、どれにでもあります。

その点はご理解の上でご検討頂けますと非常にありがたいです。

・ 金属、ステンレス製品について

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